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バンクシアの響き

時代が急展開している今、
人間社会の新旧交代にまつわる出来事の本質をトータルヘルスデザイン 近藤洋一が考察します。

美・・・豊かさの源泉


 21世紀を目前にした、1989年から1991年にかけて、この地球上でさまざまな出来事が発生しました。ベルリンの壁の崩壊、天安門事件、湾岸戦争、ソ連邦の崩壊などなど・・・。
 そんな大混乱のさなか、1990 年にトータルヘルスデザインという“美と健康”をテーマとする会社を創業いたしました。
 それ以来、皆様の温かいお心に支えられ、お蔭様で“今”があります。ありがたく厚く感謝申し上げます。
 そんな“今”・・・。
 現代という時代をつくりあげてきた社会のメカニズムが、時の流れに対応しきれなくなりつつあり、世界一斉にカウントダウンが始まっているのではないでしょうか?22世紀の人から見ると、“今、私たちが生きているこの時代”はどのように映るのでしょうか?
 現実問題として、人工知能がこのまま進化し続けると、2045年には、コンピューターの能力が人間の頭脳を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」がやってくるという近未来の予測があります。その時、人間はどうなっているのでしょうか?
 気になるところですね。
 明治維新以来の西洋化、金融資本主義化が行き詰りつつあるようなのですが、古来、日本には【地獄の沙汰も金次第】という表現があるくらいですから、【お金がすべて】の世の中が続いてきたように思われます。
 私たちの意識に占める豊かさの源泉が、“お金”から“美意識、美的感性”へと移行していくことによって新たな進化が始まる、そんな時を迎えているのかも知れません。
 未来を創造するのは機械ではなく、私たち人間なのですから「人間のあり方」という観点から未来のあり方を推論してみる必要もあるのではないでしょうか?
 視点を“経済”から“文化”へ、そして“人工”から“自然”へと移し換えてみる必要がありそうです。

“道”と“器”

 もう45年も前のことになりますが、1973年のことです。生まれて初めて一つの会社を創業いたしました。当時は大競争時代。会社を経営するというのは戦いに出かけるというイメージが強くあったように思います。
 会社をつくったからにはつぶしてはならぬ、何が何でも勝たねばならぬ・・・というイメージも強くあり、「孫子の兵法」という本を買ってきて読んでみました。
 そこには、まず何よりも基本を大切にせねばならない五事がある、すなわち、私利私欲を先にしてこじつけの名分を立てるのではなく、何故戦いを始めるのかという大義名分を建てることが何よりも大切であると言うことが書かれていました。
 まず大切にしなければならない五事とは、【道、天、地、将、法】であるというのです。
もともと、麻雀、花札、トランプなどの勝負事が大好きで、子供時代を過ごしたものですから、“天の時”“地の利”“人(将)の和”の大切さ、そしてチームであれば“法すなわち秩序”が大切であることは、ピンと来るものがありました。
 しかしトランプやマージャンなどのゲームで勝ち続けるためには、能力もさることながら“運”とか“勘”といった、あまり合理的とは思えない“時間とか空間などの宇宙的な要素”が大きくからんでいて、これらを制するのは“アタマ”というよりも“心”のあり方が大切であることを感じていました。その一方で、“道”というのは、言葉にすれば、道徳、道義、モラルということになると思うのですが、言葉を超えた何か深い、言わば宇宙をテーマとした真実が潜んでいるように感じられたものです。宇宙を背景として“道”とは何かを考えてみますと、孫子よりも老子、荘子の老荘思想が浮かんでまいります。
 ・・・・・私たちが生活しているこの世の中、すなわち天地が開けるずっと前から、形もなければ実体もなく、音がするでもなく、何かに依存するでもなく、ただぼんやりとして流れ動いているものがある。この混沌とした、流れ動くものは【道】と呼ばれ、存在するあらゆるものの中に働き続けていて、この世界を生み出す母のような役割を果たしている。
 この形もなく、実体もない“混沌”が生み出す働きが、山川、動物、植物などの「形と実体」を備えた【器】を生み出した・・・・・というのです。
 この「見えるものの世界」、すなわち【器】の秩序を生み出し支配しているのが、「見えない世界」すなわち【道】の働きだというのです。
 一方、プラトンの宇宙創成神話では、工作者としての神が美しい【天上のイデア界】を眺めながら、それをモデルとして、形のない混沌とした質量をこねあげて万物を創り、それに神の息吹を吹き込んで天上の完全なイデアを分かち与えることによって、この【地上界の秩序】を創り上げることができたとされています。混沌と秩序の関係は、東アジア・中国と西洋では全く正反対になっているというわけです。
 また【道】というのは、陰と陽が交代しながら働く変化を意味していて、その後、万物の秩序を形成する力をもったエネルギーを表す【気】という言葉が使われるようになったと言われています。


因果律と共時性

 私たちは、学校で西洋科学に基礎をおいた学問を習いますので、【原因】と【結果】の関係を明確にする習慣が身についているように思われます。すなわち西洋科学では、自然に対して「何故、こんなことが起こるのか?これからどうなっていくのだろう」と、まず“WHY?”と問いかけ、物事の成り立ちを【原因と結果】の関係から問いかけるのが通常の姿です。
 これに対して中国における【易経】の世界では、“世界の始まりそして終わり”を問うことがないと言うのです。
 ただ「世界はどのように動いているのか?」すなわち“HOW”と問うことだけなのだそうです。
 私は鍼灸院で鍼治療をしていただくことがあるのですが、肝臓とか腎臓とか特定の臓器を対象にするやり方ではなく、一本の鍼を特定の“ツボ”に打ち込むだけで、全身の調子が良くなる、という治療法なのです。
 その先生の鍼治療のメカニズムは、因果関係というよりも、空間的にへだたった二つ以上のものの間に感応による同調現象が起こるという【共時性】の原理によっているように思うのです。
 ということは、これらのものの間に同調現象を引き起こす「作用の場」が存在していて、そこには、何かみえないエネルギーが流れて働いているということになります。
 これが【気】なのですね。
 古代中国人は「時間の本質は、力であり、エネルギーを帯びた働きである。空間の事物はそのエネルギーを受け入れて活動する。時間は変化させる【力】であり、空間はその力を受けて変化する【場】である。すなわち【生み出すもの】と【生まれるもの】である。」ととらえていたのです。