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バンクシアの響き

時代が急展開している今、
人間社会の新旧交代にまつわる出来事の本質をトータルヘルスデザイン 近藤洋一が考察します。

さくら




桜の花咲く日本の心

日本人は「いかに自然と調和し、自然を生かす知恵に磨きをかけるか」という課題を追求してきた民族だと思います。「花鳥風月」「雪月花」という表現がそのことを物語っているのではないでしょうか?
 戦後、西洋型の教育が導入されると同時に西洋との交流も深く活発になったために、私たちの心のあり方もすっかり西洋風になったようです。
 その結果、いかに自然を超えていくか、そのためには自然と対決することも辞さないという心の傾向が強くなったようにみえますが、その一方で、「自然とつながり、自然と共生する」という日本の伝統を大切にする、そんな心のあり方も芽生えてきているように思われます。
 小学校一年生の時、太平洋戦争が終結し平和が訪れたのですが、当時は貧しくて、遊ぶ道具もなかったものですから、お正月になると、大人の人たちに交じって“百人一首”に打ち興じたものでした。
“百人一首”に登場する和歌には、四季すなわち春夏秋冬が明確に詠まれている歌が多いので、“百人一首”というかるた遊びを通して、日本人の意識に刻み込まれてきた「花鳥風月」と親しむことができたのではないかと、いまにして思えてきます。


日本人と「桜の花」

日本が豊かになるにつれて、春になると、老いも若きも一緒になって“お花見”に打ち興じる姿が見られるようになりました。桜の花を見ながら、お酒を飲み大騒ぎをすることがコミュニティを活性化するエネルギーになっていったように思います。
 “花を見る”ことによって、自然と調和し共生するという生き方をお互い同士無意識のうちに確認し合っていたのではないでしょうか?
枯れ木に花を咲かせる特技をもつ“花咲かじいさん”は私たちの大先輩・千両役者ということになりますね。
 奈良時代、大伴家持によって万葉集が編纂されたと伝えられています。当時、“花”というと梅を指していたのだそうですが、平安時代になって古今和歌集が編集されたころには、“花”というと桜を指すようになり現在に至っていると言われています。
「散る桜、残る桜も散る桜」という表現が、日本人の感性そして美学の根底を支えているように思われます。
 「桜散る」というのは、自分の喜びを放ちきって、すなわち幹から離れることによって、他の人に喜んでいただく生き方を指していると言われています。
 私たちはいつ死ぬかわからない、しかしいつか確実に死ぬのだからその日のために、一日一日丁寧に生きようではないか―日本人の理想的な在り方を「桜の花」は見せてくれているのだと思います。親鸞聖人の詠まれたとされる和歌をご紹介させていただきます。桜の花の本質を表現していて有名ですね。

明日ありと
思ふ心のあだ桜
夜半に嵐の
吹かぬものかは


 花がいきいきと美しく咲いている― しかしいつまでも美しく咲いているわけではない。やがて散っていくのだ。だから、雪のようにはらはらと舞いながら散っていく桜の花を愛でる心が育まれ、散りゆく桜は特別の存在になるということだと思います。
一休禅師は「花は桜木、人は武士…」という言葉を残していますし、本居宣長は次のような句を詠んでいます。

敷島の
大和心を人問はば
朝日ににほふ
山桜花



百人一首と「桜の花」

百人一首には「桜の花」をうたった和歌が数多く登場します。

花の色は
移りにけりな
いたづらに
我が身世にふる
ながめせしまに


絶世の美女として名高い小野小町の歌です。
・・・・・・美しい花も、むなしく色があせ衰えてしまった。それと同じように私も、世の中を眺めているうちに、むなしく衰えてしまった・・・・
美女ならではの嘆きではないでしょうか?林芙美子の「花のいのちは短くて苦しきことのみ多かりき」という言葉が思い出されます。
 小野小町は秋田県の出身なので、“あきたこまち”というブランドのお米が販売されていますが、郷土の誇りなのですね。

久方の
光のどけき
春の日に
しづ心なく
花の散るらむ


 紀貫之のいとこ紀友則の歌です。・・・・・おだやかな光のさす春、桜の花がはかなく散っていく・・・・・人生の無常をうたった歌ですね。

花さそふ
嵐の庭の
雪ならで
ふりゆくものは
わが身なりけり


 鎌倉時代、花吹雪の庭を歌った藤原公経の歌です。
・・・・・嵐のような激しい風の吹きすさぶ庭で雪のように桜の花が散っていくが、ふりゆく(歳をとっていく)のは自分なのだ・・・身につまされる歌ではないでしょうか?

いにしへの
奈良の都の
八重桜
けふ九重に
にほひぬるかな


 伊勢大輔という女性の詠んだ歌です。
・・・・・かつての奈良の都で咲いていた八重桜が、今日この皇居(九重)で素敵な香りを放ってくれている・・・・心満たされた女性の歌ですね。

 4月というと、桜の花を背景に、幼児から脱皮するべくランドセルを背負った、やや緊張気味の可愛い小学一年生の姿が浮かんできます。私たちも、春のエネルギーで心を満たし、新鮮で素晴らしい未来を創造するチャンスにいたしましょう!